ロンドンで開かれていたG7(主要7カ国)の財務相会合で5日、各国はグローバル企業への課税強化を視野に入れた「歴史的」な合意に達した。企業が商取引で実際に利益を得ている現地で納税するよう制度を作るほか、法人税に各国共通の最低税率を定める方針。
G7各国は、法人税15%以上を目指すことで一致した。世界各国の法人税引き下げ競争に歯止めをかけようとするもので、実現すればハイテク大手の米アマゾンや米フェイスブックなどが影響を受ける可能性が高い。
最低法人税率をめぐる協議は数年前から続いていた。今回アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、カナダ、イタリア、日本、そして欧州連合(EU)が一致した。新型コロナウイルス感染症COVID-19による危機的状況の中で大規模な財政出動を迫られてきた各国政府に、数十億ドルの税収が見込まれる。
7月に予定されている主要20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議に議論が引き継がれ、中国やロシア、ブラジルなどが追随を迫られることとなる。
各国の評価
アメリカのジャネット・イエレン財務長官は記者団に対し、「歴史的な」合意は「法人税の引き下げ競争を終わらせ、アメリカの中間層や労働者にとって、世界中で公平性が確保されることになる」と述べた。
イギリスのリシ・スーナク財務相は、今回の合意によって世界の税制が「グローバルなデジタル時代に適したもの」になると評価した。
ドイツのオラフ・ショルツ副首相兼財務相は、「税の正義と連帯にとっては非常に良い知らせであり、タックスヘイブン(租税回避地)とっては悪い知らせだ」、「企業はもはや納税義務から逃れられないだろう」と述べた。
欧州委員会のパオロ・ジェンティローニ経済問題担当委員は、「税制改革に関する前例のない世界的合意に向けた(中略)大きな一歩」で、7月にイタリア・ヴェニスで開催されるG20会議で「その実現に向けて積極的に貢献する」と述べた。
一方でアイルランドのパシャル・ドノホー財務相は、いかなる合意も「小国と大国、先進国と発展途上国のニーズを満たすものでなければならない」とツイートした。アイルランドは現在、12.5%という低い法人税率を採用している。
なぜルール変更を
企業は現在、比較的法人税率の低い国に現地法人を設立し、そこで利益を申告することができる。これにより、利益の大半がたとえ他国での売上によるものであっても、現地の税率に沿って納税できる。これは合法で、一般的に行われている納税方法。
今回の合意には、2つの方法でこうした事態を防ぐ狙いがある。
1つは、企業に対し、最終的に利益を申告する場所ではなく、製品やサービスを販売している国の税率に沿ってより多くの法人税を支払わせるというもの。
2つ目は、法人税の引き下げ競争に歯止めをかけるための国際的な最低税率を設定するというもの。
どのように機能するのか
この合意の「第1の柱」は、多国籍企業に事業展開している地域で納税させるというルール。これは、少なくとも利益率が10%以上のグローバル企業に適用される。
例えばイギリスの場合、大規模な多国籍企業からより多くの税収が見込まれ、公共サービスの支払いに役立てられる。
「第2の柱」は、各国による法人税の引き下げ競争を避けるため、法人税の最低税率を世界全体で15%にするというもの。
イギリスでは法人税はすでに19%で、パンデミック下の支出に対応するため、2023年までに25%に引き上げられることになっている。
アメリカのイエレン財務長官は、イギリスやEUで課されているような国ごとのデジタルサービス税は廃止され、新たな合意内容に置き換えられると理解していると述べた。アメリカはこうした税について、米テクノロジー大手を不当に標的にしていると考えている。
アマゾンやフェイスブックが最低税率の適用対象になるかどうかを問われると、「高収益企業が対象となり、これらの企業はほぼすべての定義において対象となると思う」と、イエレン氏は述べた。
企業の反応
ロイター通信によると、アマゾンの広報担当者は「多国間の解決策を生み出すOECD主導のプロセスが、国際的な税制に安定をもたらすと信じている」と述べた。
「今回のG7合意は、この目標達成のための取り組みにおいて、歓迎すべき一歩だ」
フェイスブックのニック・クレッグ氏は、今回の合意は「ビジネスに確実性をもたらし、国際的税制に対する国民の信頼を強めるための重要な第一歩」だと述べた。
グーグルの広報担当者は、「我々は国際的な税制ルールの更新のための取り組みを強く支持する。バランスのとれた永続性のある合意が早期に成立するよう、各国の協力継続を願っている」とした。
G7、各国共通の法人税は最低税率「15%以上」合意 グローバル企業を視野に - BBCニュース
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