米株式相場は4日続落。米地銀に対する新たな売り浴びせが世界的に株式トレーダーを動揺させた。次に転落するのはどの機関か市場は疑心暗鬼になると同時に、米政策金利引き下げの観測も強まった。
株式 | 終値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
S&P500種株価指数 | 4061.22 | -29.53 | -0.72% |
ダウ工業株30種平均 | 33127.74 | -286.50 | -0.86% |
ナスダック総合指数 | 11966.40 | -58.93 | -0.49% |
この日売買停止になった金融株はウェスタン・アライアンス・バンコープとパックウェスト・バンコープ。いずれも一時は60%を超える下げとなった。規模の大小を問わず他の金融機関が巻き添えとなり、 ファースト・ホライゾンはトロント・ドミニオン銀行との合併破棄が嫌気されて、30%を超える下げ。シリコンバレー銀行(SVB)が3月に増資を試みた際に ゴールドマン・サックス・グループがどのような形で関与したのか、調査が入っていることもセンチメントを暗くした。
JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカ(BofA)など大手を含むKBW銀行株指数は、採用21銘柄のすべてが下落。25億ドル(約3400億円)規模のSPDR・S&P・地銀上場投資信託(ETF)は、2020年10月以来の安値。大型ハイテク株の上昇で、S&P500種株価指数は下げ渋る場面もあった。
ウォール街の「恐怖指数」と呼ばれるCBOEのボラティリティー指数(VIX)は上振れし、節目の20に達した。4月の大半において同指数は落ち着いており、つい先週には16を下回っていた。
エバコアISIの中央銀行戦略責任者クリシュナ・グーハ氏は「銀行不安はまだ深刻な段階にあるかもしれないことを、政策当局者は今すぐ認識すべきだ」と話す。「問題なのは、金融の安定を取り戻す政策の選択肢が限られていることだ」と述べた。
パックウェスト・バンコープは3月以降の預金残高が増加していることを明らかにした上で、複数の投資家候補との協議を確認した後も株価は急落し、51%安。 ウェスタン・アライアンスは売却を含む複数の選択肢を検討している事実はないと、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)の報道を否定したが、それでも株価は38%安で引けた。
SEIの最高投資責任者(CIO)、ジム・シュミゲル氏は「きょうは見ての通り、大変な日だ。米地銀セクターはじわじわと信頼の危機に発展しつつあり、きょうはそれが一気に悪化した」と解説。「クライアントには株式からキャッシュへのシフト追加を勧めている」と述べた。しかし他の市場関係者と同様、今回の状況が2008年の金融危機と類似しているとはみていないという。
金利スワップ市場では、米連邦公開市場委員会(FOMC)が今週の会合で決定した0.25ポイントの利上げを7月までに反転させる可能性が高いとの見方が織り込まれた。そのような 利下げが6月に実施される確率は約25%と示唆されている。
ウルフ・リサーチのクリス・セニック氏は「当社の見立てでは、深刻な金融ストレスがあるか、リセッション(景気後退)が間近に迫るか、あるいはその両方が出現しない限り、連邦公開市場委員会(FOMC)が利下げに踏み切る可能性は非常に低い。株価はどちらのシナリオでも下げる可能性が高い」と述べた。
米国債
米国債市場では中短期債の利回りが低下した一方、期間10年以上の利回りが上昇し、イールドカーブは急激にスティープ化した。地銀株への売り浴びせで銀行セクターの不安が静まらず、トレーダーらは今年の利下げ時期前倒しと利下げ幅の拡大を予想している。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 3.73% | 4.4 | 1.19% |
米10年債利回り | 3.37% | 3.9 | 1.18% |
米2年債利回り | 3.78% | -2.1 | -0.54% |
米東部時間 | 16時44分 |
朝方発表された経済指標は米国債を圧迫した。 新規失業保険申請件数は予想に近く、前週の修正幅も小幅だった一方、1-3月(第1四半期)の単位労働コストは予想を上回った。しかし株式相場が下げて始まると米国債の下げは縮小した。
外為
外為市場で円は3日続伸。逃避の買いが続き、この日は1ドル=133円50銭まで上昇した。相次いだ米地銀破綻で米政策金利は早ければ6月にも引き下げられるとの観測が広がった。欧州中央銀行(ECB)の政策引き締めペースが減速したことを受けて、ユーロは下落。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1221.87 | -1.56 | -0.13% |
ドル/円 | ¥134.26 | -¥0.45 | -0.33% |
ユーロ/ドル | $1.1014 | -$0.48 | -0.43% |
米東部時間 | 16時44分 |
シティFXのG10戦略EEMEA責任者バシレイオス・ギオナキス氏は、米政策金利がピークを付けたとの見方を一因に、中期的なユーロ強気を維持する一方で、「投資家は1.09/1.0950ドルへの押し目でユーロを買い、1.11ドルに向けて利益確定で売るとみられ、1.09から1.11ドルのレンジにとどまる可能性は比較的高い」と述べた。

上段:円スポット価格、下段:SPDR・S&P地銀株ETF
出所:ブルームバーグ
原油
ニューヨーク原油先物相場はほぼ変わらず。需要縮小の兆候が相次いで示されたことから、前日までは3日連続で大きく下げていた。
サウジアラビアはアジアの顧客向け販売価格を4カ月ぶりに引き下げた。中国の製造業のデータで需要低迷が示唆されたことが背景にある。
CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「原油は悲観的なセンチメントやボラティリティー上昇、マクロ不安、現物市場低迷の渦の中で取引されている」と指摘。「昨晩の取引でのボラティリティーは、原油は現時点で投資対象として適していない可能性があり、システマチックな取引戦略の手中に陥った状況が続くとの見方を浮き彫りにしている」と述べた。

原油は最近の下落により、相対力指数(RSI、期間9日)で売られ過ぎの領域に入っており、近くテクニカル的な調整が起こる可能性が示唆されている。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物6月限は、前日比4セント(0.1%)安の1バレル=68.56ドルで終了。アジア時間の取引では一時7.2%下げる場面もあった。ロンドンICEの北海ブレント7月限は17セント高の72.50ドル。
金
金相場は3日続伸。米利上げ休止の可能性や米景気リスクの高まりを背景に買いが強まり、アジア時間には約1年ぶりの高値を付けた。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は前日、主要政策金利を0.25ポイント引き上げることを決定。一方、経済面でのリスクが強まる中、利上げが今回で打ち止めになる可能性も示唆した。パウエル議長は利下げ期待に冷や水を浴びせたが、こうしたトーンの変化を受けて年内の利下げ観測が高まっており、金が支えられている。
MKS PAMPの金属戦略責任者ニッキー・シールズ氏は「FOMCでは金の強気な筋書きを阻む要素は一切なかった」と指摘。「これは最高値更新を目指し始めるゴーサインだ」と述べた。

スポット価格はニューヨーク時間午後2時37分現在、前日比0.4%高の1オンス=2047.72ドル。一時は1.2%上昇し、ロシアのウクライナ侵攻以来の高値となった。世界経済が新型コロナウイルス禍の影響を受けていた2020年8月に付けた最高値2075.47ドルが射程圏内に入っている。
ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は、18.70ドル(0.9%)高の2055.70ドルで引けた。
原題: Bank Drama Rages On With Fed Cut Wagers Mounting: Markets Wrap(抜粋)
Treasuries Mixed, Front-End Yields fall as Fed Cut Pricing Firms(抜粋)Yen Gains for Third Day on Bank Angst as Euro Slips: Inside G-10(抜粋)
Oil Steadies After Three-Day Crash on ‘Vortex’ of Negative News(抜粋)
Gold Steadies After Jump to One-Year High on Likely Fed Pause
(抜粋)
【米国市況】銀行株に売り、利下げ観測強まる-逃避で円一時133円台 - ブルームバーグ
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