
厚生労働省は6日、最低賃金引き上げの目安を示す区分(ランク)を4つから3つに減らすと決めた。現行方式になった1978年度以来、初めての見直しになる。区分を減らして地域間の格差を是正し、日本全体の賃金底上げにつなげる狙いだ。
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同日の中央最低賃金審議会(厚労相の諮問機関)が取りまとめた。今夏に決める2023年度の最低賃金の引き上げ目安額から3区分制に切り替わる。同審議会は毎夏、最低賃金の引き上げ目安額を決め、各都道府県で秋に適用する。
現行の目安額は各都道府県をA〜Dの4つのランクに分けて示す。東京都や大阪府などがA、沖縄県や高知県などがDとなっており、目安額はAからDにかけて低くなるのが通例で、都市部と地方の最低賃金の差が広がる要因になっている。
これを是正するために3区分制を導入した上で、経済指標だけでなく各地の労働者数も加味して区分を決める。3区分制では、Aは東京や大阪など6都府県で変わらないものの、Bには北海道や岡山県、福岡県など現行制度ではCだった自治体が入った。

3区分制のBは28道府県と、A〜Cで最も多かった。労働者の数ではAとBがほぼ同数で、全体の9割を占める。4区分制ではAの労働者比率が45.2%、Bが20.4%、Cが21.0%、Dが13.5%だった。3区分制でBを増やすことで全体の賃金水準を底上げする。
22年度は最も高い東京都が時給1072円で、最も低いのは沖縄県などの853円だった。219円の差は02年(104円)に比べると2倍以上に広がっている。
最低賃金が日本全体の賃金に与える影響は大きい。最低賃金の改定後に賃上げが必要になる労働者の比率をみると、21年度は16.2%と12年度から11ポイント超上がった。北海道や東北、九州地方などが目立つ。雇用形態別では最低賃金の水準近くで働く非正規やパートタイムの賃上げにつながりやすい。
賃上げは日本経済全体にとって大きな課題となっている。岸田文雄首相は3月に開いた政府と経済界、労働団体の代表者による政労使の会議で、最低賃金の全国加重平均を22年度の961円から4%高い1000円に引き上げる目標に言及した。
日本商工会議所などの調査では4割超が23年度の最低賃金を「引き上げるべきだ」と答えている。人材確保が難しくなっている状況や物価上昇を受けて、賃金の引き上げはやむを得ないと考える企業は増えている。連合が4月5日に発表した23年の春季労使交渉の賃上げ率(基本給を底上げするベースアップ分を含む)は3.70%と、30年ぶりの高い水準になっている。
一方で最低賃金の引き上げは人件費の増加につながるため、中小企業の経営を圧迫する。東京商工リサーチの調査では23年1〜2月の人手不足による倒産は前年同期の2.6倍となり、前年同期はゼロだった「人件費高騰」を理由とする倒産もあった。人件費負担が増えたため、雇用の伸びを抑制するとの研究結果も出ている。
中小企業の賃上げのためには価格転嫁や公正な取引が重要だ。公正取引委員会などは価格転嫁を促進する取り組みを進めているが、いまだ厳しい取引条件を受け入れている中小企業は多い。
収益を上げやすくするための生産性向上も欠かせない。厚労省も事業内の最低賃金引き上げと設備投資を実施した企業への助成金を拡充しているが、政府全体でデジタル化や自動化を後押しする一段の対応も求められそうだ。
最低賃金、地方底上げ 厚労省が引き上げ区分見直し - 日本経済新聞
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