
【ニューヨーク=秋山裕之】岸田文雄首相は22日午後(日本時間23日未明)、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で講演した。時限措置である少額投資非課税制度(NISA)は「恒久化が必須だ」と表明した。新型コロナウイルスの水際対策は10月11日から緩和し、査証(ビザ)なしでの短期滞在や個人旅行の再開を打ち出した。
5月のロンドンに続いて海外の投資家に自らの経済政策「新しい資本主義」に理解を広げ、日本にマネーを呼び込む狙いがある。「日本経済は力強く成長を続ける。確信を持って日本に投資して欲しい」と呼びかけた。
首相が掲げる「資産所得倍増プラン」においてNISAは柱になる。金融庁によると3月末時点の口座数は1700万ほどに達し、投資経験のない若者層らをひき付けてきた。
累計買い付け額は27兆円あまりと2000兆円の個人金融資産の受け皿としてはまだ小さい。利用を敬遠させる理由には時限措置がある。
2014年から始まった「一般NISA」で投資できるのは23年まで、24年から始まる「新NISA」も28年までだ。非課税期間は5年に限られる。18年開始の「つみたてNISA」の場合は投資可能期間は42年まで。非課税の保有期間は最長で61年までと期限がある。
時限措置は制度の複雑さにもつながっている。一般NISAでは5年の非課税期間が終わった後に、翌年の枠に資産を移し替える「移管(ロールオーバー)」と呼ぶ手続きが必要になる。新NISAへの移管でも同様で、一般投資家に理解できないとされてきた。
首相は「老後のための長期的な資産形成を可能にするならば恒久化は必須だ」と訴えた。本来は与党の税制調査会で議論する税制改正について方向性を示した。
為替相場が1ドル=140円を超える円安を受け、外国人観光客の受け入れを促進する。「10月11日から米国並みの水準まで水際対策を緩和し、ビザなし渡航、個人旅行を再開する」と明言した。1日あたり5万人の入国者上限も同時に撤廃する方針だ。
コロナの感染拡大前は米国など68カ国・地域からの短期滞在(最長90日以内)についてビザを免除していた。現在はすべての外国人にビザ取得を求めており、手続きにかかる手間が来日の妨げになっている。
首相は講演で、人工知能(AI)や量子、バイオ、デジタル、脱炭素のイノベーション投資の促進を掲げ「特に重視するのがスタートアップだ」と強調した。
株の売却益を元手にスタートアップへ投資する場合の税優遇措置が必要との認識を示した。新興企業が社員らに付与するストックオプション(株式購入権)の税優遇措置の拡充にも言及した。
労働市場改革の発信にも時間を割いた。「メンバーシップに基づく年功序列的な職能給の仕組みを、ジョブ型の職務給中心の日本に合ったシステムに見直す」と語った。経済界と協力し、個々の企業の事情に応じて改革を促す。
「労働移動を促しながら、就業者のデジタル分野などでのリスキリング(学び直し)を大幅に強化する」と宣言した。労働生産性が上がり、働く人にさらに高い賃金を払うことができるサイクルを生み出す。
経済の活力を生み出していくには「女性活躍が重要だ」と力説した。「女性の活躍を阻む障害を一掃する決意だ。女性が日本経済の中核を担う必要があるからだ」と言い切った。キャリアと家庭の「両方追求できない理由はない」と断じ、子ども子育てを抜本的に強化する考えを明らかにした。
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