[東京 12日 ロイター] - ドル高/円安が一段と進行している。一時125.77円と、2015年6月以来の高水準を付けた。鈴木俊一財務相の発言で下落する場面もあったが、日米金融政策の方向性の違いなどを背景に円先安観が強い。ただ、日銀の政策修正に思惑が高まる可能性もあるとして、短期的に130円を付けるかどうかについては、見方が分かれている。
市場関係者に見方を聞いた。
●目先のドル高値は128円か、夏頃にドル高一巡
<三井住友ⅮSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>
週明けから一段とドル高/円安が進んだが、金融引き締めの加速を米連邦準備理事会(FRB)が示唆しており、日米金利差のさらなる拡大がドル買い/円売りの安心感につながっている。ただ、来月は50ベーシスポイント(bp)の利上げがほぼ織り込まれており、量的引き締め(QT)に関しても5月頃に決定するというのが市場のコンセンサスで、米利上げに関してはいいところまで織り込みが終わっているとみている。
また、物価の伸びも昨年のベース効果を考えると、4―6月期で少し落ち着くと考えられる。5月以降、連続で大幅利上げが行われていけば、インフレが徐々に落ち着くという見方が広がるので、期待インフレ率や米長期金利の上昇も一服し、夏頃にはドル高/円安の進行の一巡感も出てくると予想する。
目先3カ月程度のドル/円の高値は128円を予想する。コンスタントに利上げが実施されれば、物価の伸びも今後1年かけて落ち着いてくるだろう。米国の長期金利の上昇は一服し、利回り曲線では短期金利が上がっていくとみている。来年は米利上げを材料にドルを買って円を売る動きは落ち着くとみられ、2023年6月末のドルは123円程度の推移を予想している。
●ドルの上値は徐々に重く、130円には届かずか
<あおぞら銀行 チーフ・マーケット・ストラテジスト 諸我晃氏>
先週、ブレイナード米連邦準備理事会(FRB)理事がバランスシートの急速な縮小について言及したことから、フラットニングしていた米国のイールドカーブがスティープニングし、米10年債利回りが上抜けた。これを受けて日米の金利差拡大の面からドル/円が上昇している。
今後も日米の金融政策の方向性の違いと日本の貿易赤字の拡大がドル/円のドライバーとなる。大きな節目である125.86円に近づいてきており、米消費者物価指数(CPI)の結果次第では、上抜ける可能性が出てきた。
ただ、ドル/円の上値を抑制する材料も出てきている。日本当局からの円安けん制発言はいつ出てきてもおかしくない。また、上海のロックダウンを背景に需要減少懸念から原油先物価格が下落しており、以前ほど日本の貿易赤字拡大に対する逼迫感がなくなってきている。さらに、米FRBがインフレ抑制に向けて急速な金融引き締めを行うとの見方から、株価がネガティブに反応している。このため、ドルの上値が徐々に重くなってくるだろう。
ドル/円の3カ月先の水準は123円台が中心となり、レンジとしては120―126円を想定。米金利の上昇が止まらなければ126円を超える可能性もあるが、130円には達しないのではないか。1年先のレンジは118ー123円が中心になるとみている。
●4ー6月期のドル、高値127円を予想 円安は日本側に要因
<みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>
足元の円安/ドル高の理由は2つある。1つは、米国の利上げや金融引き締めの加速。2つ目は、貿易赤字による日本の需給の緩みで円が売られているという点だ。国際決済銀行(BIS)が公表する名目実効為替レートをみると、米ドルは年初来0.4%しか上昇していないのに対し、円は年初来5%下落している。円が売られている状況なので、日本側にある程度要因があるという認識がないと、相場を読み間違える。
日本は資源輸入国にもかかわらず、円安でも困らないという金融政策や、そういう情報発信をしているので、円の先安観を強めている。
目先4―6月期のドル/円は、122―127円程度で推移すると予想する。また、来年の4―6月期のドルの高値は130円程度になるとみている。今後は、急激にというよりは、徐々にドル高/円安が進むのではないか。米国の利上げに伴う長期金利、短期金利の上昇はいずれ止まるので、米金利上昇を背景にしていた円売り/ドル買いの勢いは持たないだろう。
一方、足元の円安は日本側の要因が大きいので、日本サイドのアクションでは(ドル高/円安が)変わる可能性はある。例えば、金融政策の転換が印象付けられるなどの展開があれば、ドル高/円安の巻き戻しが起こるとみている。
円安が一段と進行、ドル130円に届くか:識者はこうみる - ロイター (Reuters Japan)
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